2024年12月の金融マーケットの動きをまとめています。
マーケットの動向
マーケット概況
【全体】
2024年12月の金融マーケットは、2025年のアメリカ経済の動向を巡る思惑に影響を受けた動きとなりました。
【為替】
ドル・円は、月初は日銀の利上げ観測やアメリカの連邦準備制度( FRB )の利下げ期待から一時149円台となりましたが、日銀の利上げ見送りや、FRBが予想通り利下げを実施したものの、2025年の利下げ予想回数を減らしたことが市場に影響し、円売り・ドル買いが加速、特に、トランプ次期政権の成長・インフレ加速政策がドル高要因として注目され、158円まで上昇する場面もありましたが、前月比5.0%円安ドル高の1ドル=157.15円付近で取引を終えました。
【株式】
日本は、月中旬には日銀や米FRBによる金融政策への警戒感から下落しましたが、日銀の利上げ見送りによる円安の進行などを好感して上昇、 日経平均 株価は前月比+4.4%の39,864.54円となりました。
中国は、月前半は中央経済工作会議での景気刺激策期待から上昇したものの、月後半は景気刺激策が目新しさを欠いたことや景況感の悪化から下落し、 上海総合指数 は前月比+0.8%の3,351.76となりました。
インドは、月前半は成長鈍化懸念の後退や景気刺激策への期待から上昇しましたが、後半はルピー安や外国人投資家の売り越しを受けて下落、 SENSEX指数 は前月比-2.1%の78,139.01となりました。
ヨーロッパは、月前半は中国の景気刺激策への期待などから上昇したものの、月後半は米国の2025年の金利見通しを受けて下落、 STOXX欧州600指数 は前月比-1.1%の504.85となりました。
アメリカは、月前半は一定の値幅での値動きが続きましたが、18日にFRBが2025年の利下げ予想回数を引き下げると、金利の高止まりによる経済や株価への悪影響が懸念されて下落しました。その後のサンタクロース・ラリーではハイテク株を中心に上昇する場面もありましたが、クリスマス明けには再び下落、 ダウ平均 は前月比-5.6%の42,392.27ドル、 NASDAQ 指数は+0.3%の19,280.79、 S&P500 は-2.7%の5,868.55となりました。
【債券】
日本では、日銀による早期利上げ観測や、米国の長期金利上昇の影響を受け、月後半には10年国債利回りが一時1.119%まで上昇(価格は下落)、10年国債利回りは前月比+3.9bpの1.111%となりました。
アメリカでは、月初は FRB の利下げ観測を受けて債券が買われ、利回りが低下しましたが、月中旬以降、FRBが2025年の利下げ予測回数を引き下げたことが市場に影響して利回りが上昇、10年国債利回りは前月比+40bpの4.58%となりました。
【商品】
海外商品市場では、金は、月初に米利下げ観測や中国の金購入再開、シリア・アサド政権崩壊などの地政学的リスクの高まりを背景に上昇、2,756.70ドルまで上昇しましたが、月中旬に米FRBが利下げペースの鈍化を示唆したことで下落に転じ、 COMEX 中心限月は、前月比-0.4%の1 トロイオンス =2,669.00ドルとなりました。
原油は、月初に中国の景気刺激策やアメリカによるイラン制裁の強化を背景に上昇したものの、供給過剰懸念やドル高の影響で中旬には下落しました。その後、米国の在庫減少や中東情勢の緊張で需給引き締まり観測が強まって、月末に上昇し、 WTI原油先物 中心限月は前月比+7.5%の1 バレル =73.13ドルとなりました。
OECD景気先行指数
※『OECD景気先行指数』は、 経済協力開発機構 (OECD)が公表しているもので、各国の景気転換点の兆候を早期に捉えるために開発された指数です。
主な経済指標
今月の注目トピック
サンタクロース・ラリー
2024年12月のアメリカ株式市場では、例年期待される「サンタクロースラリー」が不発に終わりました。 「サンタクロースラリー」とは、年末にかけて株価が上昇する傾向を指します。クリスマス前後にかけて、薄商いの中で投資家心理が楽観的になり、株価が上昇する現象です。 しかし、今年はクリスマス休暇前は株価が上昇したものの、月末にかけて上昇分下落してしまいました。
ラリー不発の背景 まず、2024年12月にラリーが発生しなかった背景として、FRB(米連邦準備制度)の利下げペースの鈍化が挙げられるでしょう。FRBは12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で市場予想通りに利下げを実施しましたが、2025年の利下げ見通し回数を引き下げました。この決定により、長期的な高金利環境が続き、借入れコストの高止まりによる経済や企業収益への悪影響が意識されました。 また、トランプ次期政権の政策への不確実性の影響も考えられます。公約の法人税減税や規制緩和が成長期待を高める一方、インフレ加速や財政赤字拡大が懸念され、投資家は楽観と慎重の間で揺れたことが考えられます。 さらに、地政学的リスクも指摘できます。ウクライナ戦争の長期化やパレスティナ問題の激化やアサド政権崩壊などの中東情勢の緊迫化が市場にリスク回避のムードをもたらし、安全資産への逃避が進む一方で、株式市場の上値を抑える要因になったと考えられます。
今後の展望と市場への影響 2024年のラリーの不発の要因をこのように考えた場合、この現象は2025年の市場の動きを暗示するものになるのかもしれません。 FRBの金融政策は2025年以降の市場動向に大きな影響を与えるでしょう。利下げペースの鈍化は、金利の高止まりを通じて住宅市場や消費、設備投資に影響を及ぼす可能性が高く、これが株価の下押し圧力となる懸念があります。 トランプ次期政権の政策も、2025年の株式市場に影響を与える重要な要素です。特に、インフラ投資拡大や減税の実現度合い、財政政策のバランスが、企業業績や投資家心理に影響します。 さらに、地政学的リスクが解消される兆しがないとなると、新たなリスクが市場の不安定要因となる可能性もあります。
2024年のサンタクロース・ラリーの不発は、今後の米国株式市場の動向を示す重要な「しるし」なのかもしれません。2025年も市場の変動要因となる金融政策や地政学リスクへの注視を欠かさないことが大切になりそうです。
主な経済イベント
- 8日(水):アメリカ、 ISM製造業景況感指数 (12月)
- 9日(木):中国、 消費者物価指数 (12月)
- 10日(金):アメリカ、 雇用統計 (12月)
- 15日(水):アメリカ、消費者物価指数(12月)
- 15日(水):中国、小売売上高・鉱工業生産指数(11月)、実質GDP
- 23日(木):日本、 金融政策決定会合
- 28日(火):アメリカ、FOMC( 連邦公開市場委員会 )
- 30日(木):EU、 ECB理事会
※ このレポートは対象月の各マーケットの動向を要約したものであり、本資料における記載、データ及び図表等は将来の資産状況の成果を保証または予想するものではありません。
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