【2022年8月】月次マーケット・レポート

マーケット・レポート

 

2022年8月の金融マーケットの動きをまとめています。

マーケットの動向

マーケット概況

【全体】

2022年8月の金融マーケットは、アメリカ 連邦準備制度理事会 (FRB)が積極的な利上げを継続するか否かに対する市場参加者の思惑が、各市場の値動きに大きな影響を与えました。
月前半は、アメリカで 消費者物価指数 (CPI)が低下するなど、各種経済指標が景気減速の兆候を示したことから、 利上げ 方針に対する楽観的な見方が広がって、株式や商品市場は上昇、ドルは下落傾向となりました。
しかし、月後半、ジャクソンホール会合でパウエルFRB議長が、「金利上昇、経済の減速、そして労働市場が緩むことにより インフレ 率が下がるだろうが、それは同時に家計や企業に痛みをもたらすことだろう。しかし(それらをしないことにより)物価の安定を回復できなかったならば、それを遥かに凌ぐ痛みをもたらすことになるだろう」と述べたことから、FRBによる積極的な利上げが続き、それが景気後退に繋がるとの見方が広がって、株式や商品市場は下落、ドルは上昇傾向に転じました。

 

【為替】

ドル・円は、月前半は、台湾を巡る米中の緊張高まりによる 質への逃避 や、米CPIが低下したことでFRBの金融引き締めが緩み、日米の金利差が縮小するとの思惑から132~133円台での値動きでしたが、FRB理事から利上げ継続方針の発言が相次いだことや、パウエルFRB議長の利上げジャクソンホール会合での発言を受けて円安が進み、前月比4.3%円安ドル高の1ドル=138.96円となりました。

 

【株式】

日本は、米CPIが低下してアメリカの積極的利上げ観測が後退したことから、月中旬にかけて日経平均は29,000円台まで上昇しましたが、パウエルFRB議長の発言を受けて大幅に下落したため、 日経平均 は前月比+1.0%の28,091.53円で引けました。

中国は、ペロシ米下院議長の台湾訪問による緊張の高まりから月初に株価が下落したものの、米CPI低下を受けて月中旬までに株価は回復しました。しかし、月後半になると、パウエルFRB議長の発言や中国国内での記録的な猛暑や新型コロナ感染拡大による規制強化から株価は下落し、中国 上海総合指数 は前月比-1.6%の3,202.14となりました。

インドは、月下旬にパウエルFRB議長の発言などを受けて下落したものの、外国人投資家からの資金流入が続いたことから上昇し、インド SENSEX 指数は前月比+3.4%の59,537.07となりました。

ヨーロッパは、月半ば以降、ユーロ圏の消費者物価指数が過去最高となるなど経済にとって悲観的な経済指標の発表が相次ぎ、 欧州中央銀行 (ECB)による積極的な金融引締めや景気後退が懸念されて、 STOXX欧州600指数 は前月比-5.3%の415.12となりました。

アメリカは、各種経済指標からインフレがピークを迎えたとの見方が出て、FRBによる積極的な利上げが観測が後退したことから株価は上昇傾向となりましたが、月後半は、FRB理事やFRB議長から利上げ継続方針の発言が相次いだことから下落に転じ、 ダウ平均 は前月比-4.1%の31,510.43ドル、 NASDAQ は-4.6%の11,816.20、 S&P500 は-4.2%の3,955.00となりました。

 

【債券】

日本では、月半ば以降、米欧での利上げ・景気後退観測を受けて債券が売られて 債券利回り が上昇し、 長期金利 の指標となる10年国債利回りは、前月比+5.0bpの0.235%となりました。

アメリカでは、月初に米中間の緊張の高まりによる逃避需要から国債が買われて利回りが低下する場面があったものの、CPIの高止まりやFRB理事の利上げ継続支持発言を受けて、利回りは長短金利ともに上昇傾向となり、前月に発生した長短金利が逆転する「 逆イールド 」は解消されないまま、10年米国債利回りは前月比+48bpの3.15%となりました。

 

【商品】

海外商品市場では、金は、月前半は台湾を巡る米中の緊張の高まりやFRBによる積極的な利上げ観測が後退したことから上昇傾向となりましたが、月後半はFRB理事や議長の利上げ継続方針を受けて金利を生まない金は売られて下落傾向となり、 COMEX 中心限月は前月比-3.1%の1 トロイオンス =1,726.2ドルとなりました。

原油は、アメリカの原油在庫減少やサウジアラビアの減産発言などを受けて大幅上昇する場面もあったものの、米利上げや中国の経済減速による世界経済の景気減速懸念やイランの核合意再建交渉の進捗などを受けて大きく下落し、 WTI原油先物 中心限月は前月比-9.2%の1 バレル =89.55ドルで引けました。

 

OECD景気先行指数

※『OECD景気先行指数』は、 経済協力開発機構 (OECD)が公表しているもので、各国の景気転換点の兆候を早期に捉えるために開発された指数です。

 

主な経済指標

 

今月の注目トピック

パウエルショック

2022年8月26日、パウエルFRB議長の講演内容を受けて各国の株価が下落したことを「パウエルショック」と呼ぶ記事が相場解説で見られました。
この講演は、ジャクソンホール会合と呼ばれる毎年8月に開催される各国金融政策関係者が集まる会合で行われたものです。

8月前半、アメリカでは、FRB理事から金融引締め方針に関する発言が相次いでいたものの、公表された経済指標から、インフレはピークを迎えFRBは利上げ姿勢を緩めるのではという楽観的な見方から、各国の株式は上昇していました。
しかし、パウエル議長は、「金利上昇、経済の減速、そして労働市場の軟化でインフレ率を下げれば家計や企業に痛みをもたらす。だが、それをせずに物価の安定を回復しなかったら、それを遥かに凌ぐ痛みをもたらすことになる」と述べて、インフレ抑制に対する強い意志を示しました。
これを受けて、株式市場では楽観的な見方が大幅に後退、株価は大幅に下落しました。

株価は市場参加者の見方に大きく影響されますが、その見方は必ずしも正しいもの、合理的なものとは限らず、政策担当者などの発言で、それが修正されて大きく相場が動くことがあるというを、このパウエルショックは示しているのかもしれません。
9月21日にはFOMCが開かれ、パウエル議長からアメリカの金融政策が発表されます。
今度のパウエル議長の発言はどのような影響を与えるのか、その前後の金融市場の動きに注目です。

 

主な経済イベント

 

 

 

 

 

※ このレポートは対象月の各マーケットの動向を要約したものであり、本資料における記載、データ及び図表等は将来の資産状況の成果を保証または予想するものではありません。

※ このレポートは、当社が事実であると認める情報等をもとに作成していますが、その内容が事実であること、正確であることなどについては、一切の保障及び責任を負うことはできませんので、これらのことをご承知おきの上でご利用ください。

※ このレポートは、世界・日本の経済や各金融市場の大まかな動きを知る参考とするために作成されたものです。このレポートに記載された情報を参考に有価証券などに投資などを行い、損失が発生したとしても、当社は一切の責任を負うことはできません。

※ 有価証券などへの投資に当たっては、ご自身の財産状況や移行などを把握されたうえで、発生する利益・損失に関しては自己責任であり、ご自身以外の人は責任を負えないことをご理解・ご容認の上で行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました