【2024年8月】月次マーケット・レポート

マーケット・レポート

 

2024年8月の金融マーケットの動きをまとめています。

マーケットの動向

マーケット概況

【全体】

2024年8月の金融マーケットは、アメリカの景気動向を巡って大きく動きました。

 

【為替】

ドル・円は、月初は、日本銀行による利上げ観測に加えて、アメリカの弱い雇用統計や中東情勢の緊迫化を背景に米連邦準備制度( FRB )による大幅利下げ予想が出てドルが売られる展開となり、一時146円台まで円高が進みました。月中旬は、日銀が追加 利上げ に慎重な姿勢を示したことや、米経済の底堅さを示す統計が公表されて149円台まで円安が進んだものの、月下旬に、 雇用統計 の算出基準改定で就業者数が当初発表より大幅に下方改定されることが公表されて再度、大幅利下げ観測が出て日米金利差縮小が意識されたことから円高傾向となり、1ドル=146.16円付近で取引を終えました。

 

【株式】

日本は、月初に円高進行や弱い米雇用統計を受けて株が売られて前月末比で約20%下落したものの、米経済の底堅さを示す統計が公表されると急反発、その後は月末にかけて上昇傾向となり、日経平均株価は前月比-1.2%の38,647.75円となりました。

中国は、空売り規制の強化や中国共産党による消費刺激策の強調などが行われたものの、経済指標や米中関係の悪化から月を通じて下落傾向となり、 上海総合指数 は前月比-1.0%の2,938.75となりました。

インドは、米利下げ期待や経済指標の改善、外国人投資家の買い越しから上昇し、 SENSEX指数 は前月比+3.4%の81,741.34となりました。

ヨーロッパは、月初にアメリカの株安を受けて大きく下落したものの、底堅い米経済指標や欧州中央銀行( ECB )の 利下げ 観測などから上昇傾向となり、 STOXX欧州600指数 は前月比+1.3%の525.05となりました。

アメリカは、雇用統計など月初に発表された経済指標が低調だったことから米経済の減速が懸念されて、SP500は前月末比6%超下落しました。その後、消費者物価指数( CPI )などの経済統計が米景気の底堅さを示したことから上昇基調となり、月末にダウ平均は史上最高値を更新、ダウ平均は前月比+1.8%の41,563.08ドル、NASDAQは+0.6%の17,713.62、S&P500は+2.3%の5,648.40となりました。

 

【債券】

日本では、月初は、前月末に引き続き日銀による利上げ、急速に進行した円高や米株安を受けて、安全資産である国債が買われて利回りが急低下しました。しかし、株式の急反発や、日銀が利上げに慎重な姿勢を示すとしたことなどを受けて利回りは上昇傾向となり、10年国債利回りは前月比-14.8bpの0.922%となりました。

アメリカでは、月初に発表された弱い経済指標を受けてリスク回避のと前の国債買いが膨らんで、債券 利回り が急低下しました。その後は、株式の急反発や FRB による9月の利下げ幅を巡る思惑から上昇・下落を繰り返す不安定な動きとなり、10年国債利回りは前月比-18bpの3.91%となりました。

 

【商品】

海外商品市場では、金は、月初の株安を受けて、株式の損失を埋め合わせるための換金売りが膨らんで下落。その後は、FRBによる利下げ観測から上昇傾向となり史上最高値も更新、 COMEX 中心限月は、前月比+2.2%の1 トロイオンス =2527.60ドルとなりました。

原油は、月初は米中経済の先行き不安から下落したものの、ハマス指導者がイランで暗殺され、イランやヒズボラとイスラエルの対立の激化が懸念されたことから1 バレル =80ドル台まで上昇。月中旬以降は米中の景気減速による原油需要の低下やOPECプラスによる供給拡大観測から下落、 WTI原油先物 中心限月は前月比-5.6%の1 バレル =73.55ドルとなりました。

 

OECD景気先行指数

※『OECD景気先行指数』は、 経済協力開発機構 (OECD)が公表しているもので、各国の景気転換点の兆候を早期に捉えるために開発された指数です。

 

主な経済指標

 

今月の注目トピック

質への逃避(Flight to Quality)

質への逃避」とは、経済や市場の不透明感が高まる中で、投資家がリスクの高い資産から比較的安全とされる資産へ資金を移す現象を指します。 例えば、株式市場が不安定な時期に、投資家はより安全な国債や金といった資産に資金を振り向けることがあります。 これは、リスクを回避し、資産の価値を保全しようとする行動です。

2024年8月は、アメリカ・中国経済の先行きに対する懸念が強まりました。月初には、世界的な株価の下落が見られ、多くの投資家が損失を回避する動きに出ました(リスク・オフ)。 このような状況で、「質への逃避」が加速し、債券などの安全資産への需要が急増しました。 なお、安全資産の代表例である金はその希少性と保有コストの低さから、危機の際に「最後の避難場所」として選ばれやすい資産ですが、2024年8月初旬は、それまでに十分値上がりしていたことから、他の資産で生じた損失の穴埋めのための換金売りの影響もあって、上昇せずに小幅の下落となっているようです。

さて、質への逃避が起こる背景には、リーマンショックなど過去の大きな金融危機の記憶も影響しているかもしれません。 投資家は市場の動揺を感じ取ると、安全資産への移動を急ぐ傾向があります。 特に、2024年8月には、中国の経済減速やアメリカの景気先行き不安が重なり、金融市場に不安定さが増していました。 その結果、投資家たちは再び質への逃避を強め、これが市場全体の動きを左右する重要な要因となったようです。

このような「質への逃避」は、時に市場のパフォーマンスを大きく左右します。 質への逃避が発生すると、リスク資産を売却して安全資産に変える動きが生じることから、株式市場などのリスクが相対的に高い金融市場は大きく下落することがあります。 そして、株式などの資産に資金が回らなくなり、景気が冷え込むこともあります。

質への逃避が活発化する時期は、投資家にとっては非常に重要な局面になります。 リスク資産が上昇を続けるのか、それとも下落するのか、どちらになるのかが分からず、市場の不透明感が増す中で、どの資産に資金を振り向けるのか、あるいはこれまでのポートフォリオを維持するのかの判断をする必要が出てくるからです。 9月以降も質への逃避が起こるのか、今後も注目が必要です。

 

 

主な経済イベント

 

 

 

 

 

※ このレポートは対象月の各マーケットの動向を要約したものであり、本資料における記載、データ及び図表等は将来の資産状況の成果を保証または予想するものではありません。

※ このレポートは、当社が事実であると認める情報等をもとに作成していますが、その内容が事実であること、正確であることなどについては、一切の保障及び責任を負うことはできませんので、これらのことをご承知おきの上でご利用ください。

※ このレポートは、世界・日本の経済や各金融市場の大まかな動きを知る参考とするために作成されたものです。このレポートに記載された情報を参考に有価証券などに投資などを行い、損失が発生したとしても、当社は一切の責任を負うことはできません。

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