上昇する物価!お金の価値が減っていく今、お金の適切な管理が必要 ―なぜ資産管理?②―

学ぼう!資産管理!!

前回の記事「増えない給与!だからこそ支出のコントロールが必要」では、お金持ちでなくても資産管理を行う必要がある理由として、収入が増えないから支出をコントロールする必要があるため、ということを解説しました。

今回の記事では、資産管理をする理由の2つ目、『上昇する物価』について解説していきます。

物価は上昇傾向にある

少し前まで、日本は長くデフレ状態にあると言われ続けてきました。
バブル崩壊以降、日本の経済成長は低い状態が続いており、給与が増えないので商品やサービスの値段を上げられない、売るためにはむしろ値段を下げないといけない。
値段を下げるから給与も上げられない、そうした値下げの悪循環が続いていくことを『デフレ・スパイラル』といって、長らくこれが日本が経済成長できない原因といわれてきました。

しかし、最近では、『デフレ』という言葉をあまり聞かなくなりました。
なぜならば、日本は現在、商品やサービスの値段が上がっていく、インフレの状態になっているからです。
こちらのグラフをご覧いただくと、その様子が分かります。

消費者物価指数の推移

こちらは、総務省が発表している『消費者物価指数』のデータをもとに作成した、2000年から2020年までの商品・サービスの値段の推移を表したグラフです。 (データは『政府統計の総合窓口(e-Stat)』から取得しています。)
2000年の価格水準を100とした場合、各年の価格水準は2000年に比べてどれくらい上がっている/下がっているかを示しています。
グラフの中の青い線は『消費者物価指数』で、様々な商品やサービスの価格水準を表す数値です。
黄色い線は、食料に関する消費者物価指数で、青い線とは違って、食料の価格水準のみを示す数値です。

このグラフを見ると、青い線では、2020年は102.5くらいになっており、2000年に比べて2.5%程度、価格が上昇していることがわかります。
一方、食料の黄色い線は115近くになっており、2000年に比べると15%上昇しているということが分かります。

日本はデフレで、物価が安い国といわれることがあります。
確かに、商品・サービス全般で見ると、デフレで物価は安いと言えると思われます。
しかし、実は、食料に関しては、2013年以降、ずっとインフレ状態だったというわけです。

最近(この記事の執筆時期は2021年12月です)、「ミートショック」という言葉が聞かれるようになりました。
これは、牛丼の吉野家や、いきなりステーキなどの肉をメインとした料理を安く提供してくれる飲食店で値上げが相次いでいることを指し示す言葉です。
各社とも、値上げの理由を、企業努力では食材の値上がりをカバーできないことと説明していますが、このグラフもそのことを裏付けているわけです。

 

家計の支出に占める割合の多い「食糧費」

次に、こちらのグラフをご覧ください。

こちらは、先ほどの消費者物価指数における食費などの各費用が全体に占める割合と、総務省が行っている『家計調査(家計収支編、総世帯)』から作成した、日本の1世帯当たりの1か月の平均的な支出の内訳を表したものです。(データは『政府統計の総合窓口(e-Stat)』から取得しています。)
これを見ると、食料の支出は27%と大きな割合を占めていることが分かります。
食料品の値上がりは家計に大きな影響を与えることが察せられます。

消費支出と食料品の支出が出てきたので、こちらのグラフもご紹介いたしましょう。

消費支出と食糧支出の割合の推移

こちらは、先ほどのグラフと同じ統計から作成した、1世帯当たりの1か月の平均的な支出と、それに占める食糧支出(食費)の割合の推移です。
青い縦棒が支出額、黄色の線が食費の割合を示しています。
青色の家庭の支出は上がることもあるけれど、2007年に比べると下がってきています
一方で、食費の割合は上昇を続けていることが分かります。

2020年の縦棒が急激に小さくなったり、黄色い線が跳ね上がったりしているのは、新型コロナウイルスの感染拡大によってステイホームを余儀なくされたことから、旅行をしなくなるなどで支出が減って、代わりに、おうちグルメなどで食費への支出が増えたためだと推測されます。

2020年については、そのような特殊な事情があったと考えられます。
しかし、2007年と2019年の数字を見比べても、支出額は1万円以上減り、食費の割合は22.9%から25.4%へと上がっており、食料価格の上昇や増えない給与を反映しているのだと考えられます。

ちなみに、この食費の割合が「エンゲル係数」と呼ばれるものです。
「エンゲル係数」は、一般的に、経済が成長して生活水準が向上していくと下がるとされている数字で、発展途上国で高く、経済が成長して先進国になっていくにつれて低くなる傾向があります。

そうしたことから考えると、日本は経済成長をしておらず、先進国から発展途上国へと近づいて行っている、と考えられるのかもしれません。

 

今日の100円は来年の100円と同じではない

お金の交換価値の変化

ここまで、日本で起きている物価の上昇についてお話してきましたが、今度は、お金の価値が下がってしまう、というお話をしたいと思います。

「お金の価値が下がる?100円は100円でしょ?」と思われた方もいるかもしれません。
確かに、100円はいつまでたっても100円のままです。

たとえば、「ギザ十」と呼ばれる10円玉がありますが、あの10円玉は1951年に製造されたお金ですが、お店で使えば今でも10円として扱ってもらえます。
そのように、『額面』という意味では、お金の価値は下がらないかもしれません(未使用のギザ十であれば、コレクターの方には高値で買い取ってもらえるかもしれませんが)。

しかし、お金というものは、基本的には、物やサービスを購入するための手段、何かと交換できることがその本質的な価値です。
その『交換価値』という観点から考えた場合、お金の価値は、物価の上昇や国の金利水準の影響を受けて下がることがあるのです。

 

具体例で解説していきましょう。

日本では、2016年からマイナス金利政策が続けられていて、2021年12月時点での某ネット銀行の普通預金の金利は0.001%1年定期預金は0.1%です。
この金利水準を前提として、今、とあるお店のとある食べ物は1個100円で売られていて、物価の上昇率は1%だったとします(考えやすくするため、消費税は考慮しません、もしくは、「税込み」と考えてください)。

今、私たちが100円玉を持っているとしたら、私たちは100円玉とその食べ物を交換することができます。
しかし、今はその100円玉を使わずに、定期預金に預けることにしましょう。

それから1年が経つと、物価上昇率が1%、1年定期預金の金利は0.1%ですので、

  • ある食べ物:100円 + 100円の1%  = 101円
  • お  金  :100円 + 100円の0.1% = 100.1円

となります。
100円玉で買えた食べ物が、1年後には買えなくなってしまったことになります。

 

これが、「お金の価値が下がる」の意味です。
今日の100円は来年の100円と同じではないのです。

某お店のハンバーガーは去年も今年も100円玉1枚(と10円玉1枚)で買えるよ、と思われる方もいらっしゃると思います。
その通りではありますが、それは、某お店が色々な努力をして、色々な事情から、去年から今年にかけて値段を変えなかったからです。

牛丼などがそうですが、たいていの場合、お店や企業は、お客さんが離れてしまうことを警戒して、毎年少しずつ値上げをするのではなく、数年ごとにまとめて値上げを実施する傾向があります。
また、スーパーなどでは、特売で不定期に値段を上げたり下げたりするため、価格が上がっているのか気づきにくかったりします。
そのため、上記のような事例が身近で起きているようには思われないかもしれません。

そこで今度は、1年後よりもさらに未来、10年後までを計算してみました。
(なお、説明を分かりやすくするため、利息計算は、円未満にも利息が発生する複利方式で計算しています。食べ物の値段も同じです。)

交換価値の変化

当然ではありますが、物価上昇率>金利となっている場合には、どの年であっても、今ある100円では、とある食べ物を買うことはできません
先ほど書いた、「数年ごとにまとめて値上げを実施」というのは、4年後まではお店や企業の努力で値上げしないけど、5年後に、いきなり105円に値上げする、というのと同じです。
そう考えていただくと、すこし、身近なものと感じていただけるのではないでしょうか。

以上を図にまとめたものが、冒頭の図です。
こちらに再掲しておきましょう。

お金の交換価値の変化

このように、金利が物価上昇率を下回っている場合には、お金を使わずにおいておくと、お金の額面は減らなくても、お金の交換価値が下がってしまいます。
そのため、お金の交換価値を維持するために、お金を適切に保管する必要があるのです。

これが、資産管理をする必要がある理由の2つ目です。

 

まとめ

今回は、資産管理をする必要がある理由の2つ目として、「上昇する物価」について解説しました。

日本でも物価の上昇が進んでおり、特に、私たちが生きていくのに欠かせない食料は、8年間で13%、1年あたり1.6%値上がりしていました。
そして、家計の支出に占める食糧費の割合は、年々高まっていて、コロナ前の2019年でも、25%を占めていました。

現在の日本では、マイナス金利政策がとられており、比較的金利の高いネット銀行でも、1年定期金利は0.1%程度となっています。
このように、物価の上昇率が銀行預金の金利よりも高い状態にあると、時間の経過とともに、お金の額面は減らなくても、お金の本質的な価値である、『交換価値』が下がってしまいます
その結果、現在100円で買える物も、1年後には100円では買えなくなってしまうことが起こりうるのです。

そのため、お金の交換価値を下げないようにするため、お金を適切に使う必要があるのです。

これが、私たちが資産管理を行う必要がある理由の2つ目になるのでした。

 

次回の記事「延びゆく寿命!老後資金はいくら必要?だからこそ計画的にお金を貯めることが必要」では、資産管理を行うべき理由の3つ目について、解説していきますので、ぜひ、読んでみてください。

 

 

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