2022年11月の金融マーケットの動きをまとめています。
マーケットの動向
マーケット概況
【全体】
2022年11月の金融マーケットは、アメリカにおける 利上げ ペースを巡る思惑に大きく影響を受けた動きとなりました。
【為替】
ドル・円は、月初から緩やかに円高傾向となっていましたが、10日にアメリカの消費者物価指数( CPI )が市場予想以上に低下すると、米連邦準備制度( FRB )が利上げペースを緩め、金利上昇が止まるとの見方が広がって、1ドル=146円台から140円台まで急激な円高が進みました。 月下旬に中国での新型コロナウイルス感染の再拡大・規制強化により世界経済の見通しへの懸念が出て一時的に円安傾向となったものの、月末にかけて円高傾向となり、前月比2.7%円安ドル高の1ドル=148.71円となりました。
【株式】
日本は、月半ばにアメリカCPIの低下で米利上げペースが減速されるとの見方が広がって株価が上昇しましたが、月下旬に中国での新型コロナウイルス感染再拡大とコロナ規制に対する抗議活動の拡大などから先行き不安感が出て下落、上昇分が削られて、 日経平均 は前月比+1.4%の27,968.99円で引けました。
中国は、月前半は景気対策実施やコロナ規制緩和による経済再開に対する期待から上昇傾向となりました。月後半は、感染拡大や規制に対する抗議活動の広がりから一時下落しましたが、逆にコロナ規制緩和への期待が高まって株価は上昇し、 中国上海総合指数 は前月比+8.9%の3,151.34となりました。
インドは、インフレ率の低下などの経済指標の改善や、海外での株高を受けて海外資本が流入して株式が買われたことから上昇傾向となり、 インドSENSEX指数 は前月比+3.9%の63,099.65となりました。
ヨーロッパは、アメリカCPIの低下によるインフレの緩和や中国でのコロナ規制緩和による経済再開への期待から上昇し、 STOXX欧州600指数 は前月比+6.8%の440.04となりました。
アメリカは、月上旬に暗号資産交換業者FTXの破綻を受けて一時下落したものの、CPIの伸びが市場予想以上に低下して、FRBによる利上げペースが減速するとの期待から株価は大きく上昇。その後はFRB理事からは利上げ継続の必要性を強調する発言が相次ぎ横ばいとなったものの、月末にパウエルFRB議長が12月からの利上げペース減速の可能性に言及すると、株価は再度大きく上昇し、 ダウ平均 は前月比+5.7%の34,589.77ドル、 NASDAQ は+4.4%の11,468.00、 S&P500 は+5.4%の4,080.11となりました。
【債券】
月半ばにアメリカCPIの伸び鈍化による米国債などの金利低下を受けて 利回り が低下したものの、下旬に日本のCPIが予想以上の伸びを示すと、日本でも金利の上昇が生じるとの懸念から債券が売られて利回りが上昇、 長期金利 の指標となる10年国債利回りは、前月比+2.3bpの0.276%となりました。
アメリカでは、月半ばに発表されたCPIの伸びが予想以上に鈍化して、FRBによる利上げペースが減速するとの見方から債券利回りが低下。FRB理事が積極的な利上げへの支持を表明などを受けて利回りが上昇する場面もあったものの、おおむね下落傾向となり、10年米国債利回りは前月比-42bpの3.68%となりました。
【商品】
海外商品市場では、金は、アメリカ 雇用統計 やCPIの発表を受けて米ドルが他通貨に対して下落したことから、米ドルの 代替資産 とされる金が買われて月半ばまで上昇傾向となり、 COMEX 中心限月は前月比+7.3%の1 トロイオンス =1,759.90ドルとなりました。
原油は、中国での新型コロナウイルス再拡大やFRB理事らによる利上げ継続発言などを受けて世界経済の景気減速による原油需要の低下が懸念されて、おおむね下落傾向となり、 WTI原油 先物中心限月は前月比-6.9%の1 バレル =80.55ドルで引けました。
OECD景気先行指数
※『OECD景気先行指数』は、 経済協力開発機構 (OECD)が公表しているもので、各国の景気転換点の兆候を早期に捉えるために開発された指数です。
主な経済指標
今月の注目トピック
利上げペース
今月のマーケットは、アメリカの「利上げペース」が意識されました。
アメリカの金融政策を担う連邦準備制度(FRB)は、11月3日に4会合連続となる0.75%の利上げを決定しました。
中央銀行の利上げは通常0.25%ずつなのですが、高止まりするインフレ率を引き下げるため、FRBは異例の利上げを続けてきました。
しかし、11月に発表された経済指標では、経済の減速や物価の低下が示されました。これを受けて、マーケットでは、FRBの利上げペースが減速するとの見方が広がって、高金利を期待して上昇していた米ドルは下落し、株式や債券価格が上昇しました。
ただ、FRB理事たちは、そうした見方を打ち消そうとするかのように、積極的な金利引上げへの支持を度々表明しており、しかも、ターミナルレート(利上げの最終金利)はこれまでの予想よりも少し高くなるとも発言しています。
マーケットは投資家の思惑で動くものであり、必ずしも、実体経済の状況を反映するわけではないようです。
整合しない投資家と金融政策当局者の思惑を受けて、マーケットはどう動くのか、今月の各市場の値動きに注目です。
主な経済イベント
- 1日(木):アメリカ、 ISM製造業景況感指数 (11月)
- 2日(金):アメリカ、 雇用統計 (11月)
- 9日(金):中国、消費者物価指数(11月)
- 13日(火):アメリカ、消費者物価指数(11月)
- 14日(水):アメリカ、FOMC(連邦公開市場委員会)
- 15日(火):中国、鉱工業生産指数・小売売上高(10月) イギリス、金融政策委員会 EU、ECB理事会
- 20日(火):日本、金融政策決定会合
※ このレポートは対象月の各マーケットの動向を要約したものであり、本資料における記載、データ及び図表等は将来の資産状況の成果を保証または予想するものではありません。
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